看書空間

読んだ本の感想ブログ。

【読書メーター】2015年03月まとめ

2015年3月の読書メーター
読んだ本の数:7冊
読んだページ数:1490ページ
ナイス数:54ナイス

ダブル・ジョーカー (角川文庫)ダブル・ジョーカー (角川文庫)
読了日:3月2日 著者:柳広司
ワールドトリガー 10 (ジャンプコミックス)ワールドトリガー 10 (ジャンプコミックス)
読了日:3月4日 著者:葦原大介
恋と嘘(1) (講談社コミックス)恋と嘘(1) (講談社コミックス)感想
マンガボックスの連載を読んで購入。ようやく入手できたと思ったらもう3刷。ほんのりとディストピア(と敢えて言っておく)要素があることで、この作品世界での制約、各キャラクターの本心や抱える秘密に、ひとひねり加えられていて面白い。絵柄が可愛らしいのもgood。ネタとしてはもっと大袈裟にやることもできそうなのに、さりげなく謎を織り交ぜ、自然体で物語を展開させているところが好み。この作品には、第三の女(博多弁のセーラー服転校生とか)は登場したりしないでしょうしね(笑)。続刊に期待。
読了日:3月13日 著者:ムサヲ
池上彰が読む「イスラム」世界知らないと恥をかく世界の大問題 学べる図解版第4弾池上彰が読む「イスラム」世界知らないと恥をかく世界の大問題 学べる図解版第4弾
読了日:3月17日 著者:池上彰
マーケット感覚を身につけよう---「これから何が売れるのか?」わかる人になる5つの方法マーケット感覚を身につけよう---「これから何が売れるのか?」わかる人になる5つの方法
読了日:3月17日 著者:ちきりん
べしゃり暮らし 18 (ヤングジャンプコミックス)べしゃり暮らし 18 (ヤングジャンプコミックス)
読了日:3月20日 著者:森田まさのり
かくかくしかじか 5 (愛蔵版コミックス)かくかくしかじか 5 (愛蔵版コミックス)
読了日:3月25日 著者:東村アキコ

読書メーター

【読書メーター】2015年02月まとめ

2015年2月の読書メーター
読んだ本の数:5冊
読んだページ数:676ページ
ナイス数:101ナイス

乙嫁語り 7巻 (ビームコミックス)乙嫁語り 7巻 (ビームコミックス)感想
あとがきでも触れている通り、今巻は敢えてあっさりめの絵柄で、アニスの儚げな雰囲気がよく伝わってきた(表紙は一見美少年かと思った!)。女性礼讃の物語だったと思う。色っぽさはあるのにいやらしくなかった。どことなく満たされない気持ちに悩んだり、人に好かれたいと願ったり、困っている「姉妹妻」の力になりたいと苦しんだり。そして、周りの女性達もそんな想いや願いを優しく受け止める。美しくてしなやかで綺麗な部分が、嫌みなく描かれていた。8巻にもう1話あるということで、二人の友情の行方を楽しみに待ちたい。
読了日:2月13日 著者:森薫
失恋ショコラティエ 9 (フラワーコミックスアルファ)失恋ショコラティエ 9 (フラワーコミックスアルファ)感想
図らずもバレンタインデーに読んでしまった最終巻。登場人物達の贖罪の巻。作者は肩の荷が下りてすっきりしたかもしれないが、物語としては少し言い訳がましくなってしまった印象。ただ、薫子と(あの!)サエコに心境の変化と思われる台詞があったのはよかった。二番手同士がきっちり清算してくれたら、読者としてはもっとすっきりしたのかな。
読了日:2月14日 著者:水城せとな
カモさんの「白ペン」イラスト かんたん&おしゃれカモさんの「白ペン」イラスト かんたん&おしゃれ感想
この手の本は大抵可愛すぎてパラ見しかしないが、こちらは「白ペン」というコンセプトに惹かれて購入。白以外の単色ペンでも使えそう。シンプルめに仕上がるので、ちょっとしたアイコンを手描きしたいときのヒントになっている。可愛すぎるのはちょっと、という方にオススメ。
読了日:2月14日 著者:カモ
はじめてさん&ぶきっちょさんのためのお菓子1年生―必ず作れるシンプルレシピ (主婦の友生活シリーズ)はじめてさん&ぶきっちょさんのためのお菓子1年生―必ず作れるシンプルレシピ (主婦の友生活シリーズ)感想
10年以上前から持っている唯一のお菓子本。長い間本棚に並べたままだったけれど、料理&お菓子作りの得意な友人とバレンタインに便乗して冬っぽいかぼちゃタルトを作成。レシピ自体はそれほど難しくはない(らしい)けれど、お菓子作りの基本を知らないとやはり少し戸惑うかも。今回は友人のお蔭できっちり作れてちゃんと美味しかったです。
読了日:2月14日 著者:小川智美
神様の御用人 (2) (メディアワークス文庫)神様の御用人 (2) (メディアワークス文庫)感想
同じようなモチーフの作品が一定数あることを考えると、神様の意外性を含めてもステレオタイプの域を抜け出していない。地の文の説明っぽさと冗長な会話が、脳内アニメをそのままノベライズしているかのような印象。同じような調子のお遣いエピソードが続くので、そろそろ大きい目的や核心に迫るエピソードがほしい。強いていえば「神威を取り戻すこと」が最終目的なのかもしれないが、日本全体の意識を変えるくらいの大きくて漠然とした目的だからなあ。表紙イラストの雰囲気はよいんだけれど、本編でもうひと頑張りしてほしい作品。
読了日:2月28日 著者:浅葉なつ

読書メーター

【読書メーター】2015年01月まとめ

2015年1月の読書メーター
読んだ本の数:21冊
読んだページ数:4136ページ
ナイス数:60ナイス

ワールドトリガー 9 (ジャンプコミックス)ワールドトリガー 9 (ジャンプコミックス)感想
各登場人物の見せ場が続く。皆カッコイイけれど、侵攻編の決着が次巻に持ち越しというのは少し長いかなあ。風刃起動で2ヶ月お預けはキツイです(笑)。一番面白かったのは遊真のヴィザ戦。読者にとっては既知の情報(かつ遊真にしかできない)なんだけれど予想のつかない思い切ったアイディアだし、その決意をするに当たりもう一人の主人公である修の影響を受けているんだなあと思われる描写もいい。パワーインフレではなく、これからもこういうエピソードや登場人物たちの積み重ねたものを鍵とする作品作りに期待します。
読了日:1月5日 著者:葦原大介
きょうは会社休みます。 7 (マーガレットコミックス)きょうは会社休みます。 7 (マーガレットコミックス)感想
相変わらず物語を動かしていくのが周囲の人物ばかり。それも花笑にとって都合のいい展開ばかりなので緊張感に欠ける。33歳で、ちょっと堅物?奥手?で、二人の男性から好意を持たれるだけの魅力がある人物なんだということろをちゃんと描いてほしい。前巻の総合職転換に引き続き、大学院進学の件もこのまま流してしまうのか。そういうところこそ調理のし甲斐があるところなのに、エピソードが上滑りなのがどうも気になる。作者さんにはもう少し頑張ってほしいけれど、下手に人気作のようなので難しいかもね。
読了日:1月10日 著者:藤村真理
純潔のマリア exhibition (アフタヌーンKC)純潔のマリア exhibition (アフタヌーンKC)感想
本編の補完というか、本編読了の人が読むとにんまりできるかな、という短編集。本編はハトが可愛かったので、最後の話がお気に入りです(しかしいまだにハト呼ばわりってのはちょっと可哀相!)。顔と前髪はマリア、髪の長い部分のウェーブはエゼキエルなんですね。
読了日:1月10日 著者:石川雅之
暮らしの中にある日本の伝統色 (ビジュアルだいわ文庫)暮らしの中にある日本の伝統色 (ビジュアルだいわ文庫)感想
その言語の色の名前は、その言語が話されてきた場所の自然や習慣といった話者の感性が凝縮されたものだと思う。しかし、いまや文学的表現や服飾(和装)の世界くらいにしか生きていない。初めて知った色も多かったし、日常で中々口にする機会が減ってしまっているのは少し寂しいけれど、日本の景色に佇むたくさんの色に気づくことができ、胸のときめく一冊だった。
読了日:1月11日 著者:和の色を愛でる会
クジラの子らは砂上に歌う 1 (ボニータコミックス)クジラの子らは砂上に歌う 1 (ボニータコミックス)感想
気になっていたものの、何となく雰囲気モノかなあと思って手に取るのが遅くなってしまった。蓋を開けてみれば、ファンタジー好きでも満足のゆく世界観と書き込み。そしてまたもや勝手に日常系かと思っていたところを裏切られる過酷な展開。どことなく感じる退廃感や閉塞感が、少し漫画版ナウシカを思い出させる。総じて面白いんだけれど、あとがきは芝居がかっていない方が好みだった。本編はよかったのに、あれだけがちょっと蛇足。
読了日:1月12日 著者:梅田阿比
クジラの子らは砂上に歌う 2 (ボニータコミックス)クジラの子らは砂上に歌う 2 (ボニータコミックス)感想
この世界に生きる人々の言葉や文化や能力や制度、そのような要素だけでも読ませる土台が整っているのに、更にその上に乗ってくる物語が、人の命や心への問いかけであったり、泥クジラや外の世界の謎解きといったミステリ要素も含んでくるので、1巻に引き続き読み応えがあった。果てしなく続く砂の海と同じように、どこまで行っても救いはないのではないのかと、そんな過酷さが漂っており、ページをめくりたいという緊張感を切らさない。
読了日:1月12日 著者:梅田阿比
クジラの子らは砂上に歌う 3 (ボニータコミックス)クジラの子らは砂上に歌う 3 (ボニータコミックス)感想
チャクロたちが「生きる」ことを選択したということは、即ち戦うことではあるのだけれど……この巻のラストは素直に希望と捉えてよいのかどうか。この過酷で理不尽な運命を背負わされた人々には救われてほしいのだけれど、すっきりと晴れない気持ちが残る。淡々と描かれているようで読ませる。
読了日:1月12日 著者:梅田阿比
海月姫(15) (KC KISS)海月姫(15) (KC KISS)感想
映画化公開に合わせ、短篇ストックを足してでもこの時期に新刊を出したような。月海の奪還も割とあっさり済んでしまった。「渾沌」の話は興味深かったけれど、ファヨンとの約束を果たすなら、既に切ってしまったファッションショー以上のカードが何になるのか。ジジ様が動き出したのは伏線となるか。そろそろテンポアップしてほしいところ。短篇は、まややのニート描写というかダメ人間っぷりが何だか他人事に思えず……身を捩って笑わせていただきました。まややは妙に気合い入っていたような。
読了日:1月13日 著者:東村アキコ
ジョーカー・ゲーム (角川文庫)ジョーカー・ゲーム (角川文庫)
読了日:1月17日 著者:柳広司
マギ 23 (少年サンデーコミックス)マギ 23 (少年サンデーコミックス)感想
シバが思いの外重要キャラに(ソロモン王だからシバの女王か)。このご時勢だからこそ考えてしまう。平和や幸せって何なんだろうね。智慧を持つ生き物は本当に罪深い。生まれ持った運命に抗っているように見えるソロモンも、所詮はダビデ王の掌の上で踊らされていたに過ぎないのだろうか。
読了日:1月20日 著者:大高忍
ちーちゃんはちょっと足りない (少年チャンピオン・コミックスエクストラもっと!)ちーちゃんはちょっと足りない (少年チャンピオン・コミックスエクストラもっと!)感想
先ず着想に舌を巻くし、漫画ならではの表現も活きていて、その点では文句なしに読み甲斐のある作品。ただ、好きな作品か、また読みたいかと訊かれたら、あまり好きなタイプではないし、もう読まなくてもいいかも(笑)。部活に打ち込んでいて、幸か不幸かその手の悩みとは無縁だったんだよなあ。妙な自信もあったし。ただ、藤岡の初登場シーンで、よくいがちなワルぶってる感じの子ね、と思ってしまったのは本当に恥ずかしく思った。
読了日:1月20日 著者:阿部共実
武士道エイティーン (文春文庫)武士道エイティーン (文春文庫)
読了日:1月21日 著者:誉田哲也
GIANT KILLING(34) (モーニング KC)GIANT KILLING(34) (モーニング KC)感想
巻数も大分大きくなってきて、リーグ戦の戦歴の記憶もあやふやになってきていたけれど、思いの外ETUはいい順位につけているじゃないですか。タイトルを狙うというチームの意志がまとまった強さが備わり今まさに「乗っている」のも事実だし、ダルファーの言うように成熟していないというのも事実。勝ち点的にもメンタル的にも、大阪G戦はものにしないと始まらない。ジャイキリの着地点が見え始めてきたところで、あとどれくらい続くのか、2つの意味で気になっている(笑)。
読了日:1月23日 著者:ツジトモ
Dの魔王 2 (ビッグコミックス)Dの魔王 2 (ビッグコミックス)感想
角川書店の小説『ジョーカーゲーム』が原作だと知らないで読んでる人も少なくなさそうな。原作既読でも、漫画版では処々に構成の変更があるため、読んでいて楽しめた。特に『魔都』の視点変更は思い切っていて、次巻にも続くが楽しみである。霜月かよ子の絵はちょっと硬派なストーリーと相性がよい気がする。表紙デザインもお洒落。
読了日:1月25日 著者:柳広司,霜月かよ子
Dの魔王 3 (ビッグコミックス)Dの魔王 3 (ビッグコミックス)感想
完結。原作小説との表現上の違いも楽しめたので、原作続刊を同様にコミカライズするのもアリだと思う。締めの『XX』は賛否両論ありそうだけれど、顔が見えず何事も完遂するスパイたちの中には、(スパイとしては)ダメな奴もいるんですよ、だって人間だもの、と言われているようで、意外性を感じつつもちょっと感慨深かった。ラストシーンの魔王は原作版の方が好みかな。
読了日:1月25日 著者:柳広司,霜月かよ子
魔法使いの嫁(1) (ブレイドコミックス) (BLADE COMICS)魔法使いの嫁(1) (ブレイドコミックス) (BLADE COMICS)感想
帯にばーんと「人外×少女」と書かれ平積みにされているのに拒否感があり、中々手に取らなかったが、ようやく読んでみた感想はやはり「ときめかない」だった。肌が合わないというよりも、単純に漫画として凡庸な印象。キャラクターも設定も物語も「それっぽい」だけ。思いつくままに綴られた創作ノート感は拭えなかった。と、ここまで辛口なのは「売れている」を自称しているから。作者の力量以外にも課題があると思われる。
読了日:1月25日 著者:ヤマザキコレ
魔法使いの嫁 2 (BLADE COMICS)魔法使いの嫁 2 (BLADE COMICS)感想
主人公二人の描写が不足しているように感じる。エリアスには謎を残すとしても、日本人で読者目線に近い智世の人と形をもう少し理解したいところ。非日常世界への接続口として活きないし、この状態で何か行動されても物語の都合に感じてしまう。「あと3年」とか「モルモット」とか言われても緊迫感がない……エリアスが何とかするんだろうし。夫婦という形の必然性も見えてこない一方で、猫夫妻の方が夫婦話として印象に残るのもどうなんだろう。モチーフ集めから作家性に昇華できていればよいのだけれど、どうも後者の部分が力量不足なのでは。
読了日:1月25日 著者:ヤマザキコレ
神様の御用人 (メディアワークス文庫)神様の御用人 (メディアワークス文庫)感想
作品も自分も消化不良という感じ。語り手の視点のブレ、説明で済ましてしまいがちなところも気になった。漫画との比較になってしまうが、『夏目友人帳』の方がひとつひとつのエピソードにカタルシスがあるし、『ノラガミ』の方が神と人間との関係性(ルール)をはっきりさせていてキャラも立っている。「神様にもお願いごとがある」というアイディアを、あともう二捏ね三捏ねしてみてほしいなあ。キャラにもあと一工夫。神様が案外俗っぽくて時代に順応して生きているっていうのは、いかにも日本の八百万の神様という感じで好きなんですけどね。
読了日:1月28日 著者:浅葉なつ
君は淫らな僕の女王 (ヤングジャンプコミックス)君は淫らな僕の女王 (ヤングジャンプコミックス)感想
想像以上にストレートに卑猥な台詞を吐いていたのが却って清々しくて、「エロギャグ」というジャンルだと思いそれほど不快感なく読めたと思う。少々つっこみたい部分もあったものの、作画の可愛さもあり、案外普通のラブコメといえばラブコメかも……なんて思ってしまう自分が悔しい(笑)。メガネ君無敵伝説(自説)がまたひとつ補強された。
読了日:1月31日 著者:岡本倫
レトルトパウチ! 1 (ヤングジャンプコミックス)レトルトパウチ! 1 (ヤングジャンプコミックス)感想
読んだことのある横槍メンゴ作品の中で一番好みだった。ここまで突き抜けてくれるといっそ笑うだけ! という感じで。「彼女は”処女四天王”の中でも最弱…」やら「左手は添えるだけ」やら、お約束の使い方も効果的だった。天我って名前ももしかして……。少し榎本ナリコを彷彿とさせる絵柄。相変わらず可愛い。
読了日:1月31日 著者:横槍メンゴ
信長のシェフ 11 (芳文社コミックス)信長のシェフ 11 (芳文社コミックス)感想
大きな物語は確かに歴史をなぞるのだけれど、血の通ったキャラクター同士の物語として見たときには、やはり色々と思うところが出てくる。ついにやってきた浅井との戦いは、結末を知っていても哀しかった。この後、明智光秀の物語なども目にすることになるんだろうか。楓がひとまず無事だったことに一安心。そして、ようことの再会で、ようやくケンの過去に迫ることになるか。
読了日:1月31日 著者:梶川卓郎

読書メーター

明治の空気が美しい|『東京ラストチカ』(全2巻)

東京ラストチカ(1) (アヴァルスコミックス)

東京ラストチカ(1) (アヴァルスコミックス)

 みよしふるまち『東京ラストチカ』全2巻の感想。核心に触れるネタバレはありません。

総括

 時は明治43年、母を亡くし華族有馬家へ奉公へ出ることになった花(読み方:はな)と、その有馬家当主の光亨(読み方:みつゆき)が、身分という壁を越え心を通わせる物語。

物語

 後述のキャラクター造形による引きずられた部分もあり、ストーリーは少し凡庸だったかなあという印象。病の件は、ベタとはいえ、時代を考えると登場しうる要素だとは思うのです。ただ、特にこの時代であれば、もっと無意識の裡に身分意識というものがあるのが自然にも思います。その辺りの葛藤がないと綺麗すぎてしまう。舞台が現代であっても通用してしまうのでは勿体ないです。

絵柄

 とても可愛らしく綺麗です。両巻表紙のカラーイラストは透明感があり、作品の雰囲気がよく表れています。本編もすっきりとした線画。舞台が舞台だけに、現代モノとはまた違ったディテールも描かれていますが、そこも煩すぎず寂しすぎず。花の素朴な可愛らしさ、千鶴子(光亨の従妹)の華やかな可愛らしさが描き分けられているところなども好印象です。

キャラクター

 一方、キャラクターの造形にはちょっともの足りなさがありました。健気だが、その素直さで周囲の人間の心を開かせる主人公。華族であるにも関わらず、驕りがなく、庶民にも分け隔てなく接する当主。その身の窮屈さを嘆き、その反動で傲慢な振る舞いをするお嬢様。ちょっと紋切型の「まんま」だなあと。光亨の父、母の振る舞いも、当時の華族としてはごく一般的なものだったのではないかと思いますが、作品内に於いては主人公サイドからの視点しかありませんしね。キャラクター一人ひとりの印象は、悪くはないのですが魅力的でもなかった。もう少し肉付けされているとよかったと思います。

おすすめの見どころ

 作者が一番描きたかったのは、「明治の雰囲気」なのではないかと思っています。実際、当時の風俗をよく調べられていますよね。それを「どうだ、見ろ!」と得意げに描くのではなく、ディテールとしてさり気なく織り交ぜているところが。空きページの「明治のなんかかわいい風景」「本編で描きわすれたのでここに描く」には、かなりの共感! 私も、日本に西洋の文化が入ってきた、日本が西洋のよいところをどんどん取り入れようとしていた、でも日本本来の感性も残っている、という明治から大正にかけての時代に魅力を感じておりまして、現代から見ても遜色のないものや、現代では生まれえないものがたくさんあるように思うのです。書生姿……作者さん解ってる!
 花の生まれ育った日暮里が、当時は貧しい町だったとは知りませんでした。一方で、華やかな銀座、日本橋。当時「東京で空に一番近いところ」と言われたという、浅草の凌雲閣。何と12階建て! 現代では、少し離れたところになってしまいましたが、スカイツリーが浅草を見下ろしていますね。
 本のカバーを取ると、本体表紙と裏表紙にオマケがありますので、レンタルで読む場合などはお見逃しなく!(登場人物の年齢はここで判った。思ったより若めの面子でした)

その他小ネタ

「ラストチカ」の意味

 アルファベット表記を見てみると「Lastochika」と書かれていました。ラテン語系かと思っていたのでちょっと意外でした。
 少し調べてみたところ、どうやらロシア語で、ある生きものを表す言葉のようです。自力で突き止めたわけではないので、ここへはその訳語を記しません。作品内に確かにその生きものが登場するシーンがあり、その表現を不思議に思っていたのですが、これで納得しました。まあ、それでも何故このタイトルになったのかは解らないのですが……。もしかして元ネタになるような、歌や句、故事なんかがあったりするのでしょうか。だとしたら不勉強で申し訳ないです。

感染の心配

 本編にはとある病が登場しますが、その患者に皆割とベタベタ接していたので、当時そんなものだったのかなあと気になりました。現代でも一般人が看病するようなものでもないし、特に当時は情報がない分、皆恐れていたものだったのではないのかなあと。

日本の感性で世界を切り取る|『暮らしの中にある日本の伝統色』

暮らしの中にある日本の伝統色 (ビジュアルだいわ文庫)

暮らしの中にある日本の伝統色 (ビジュアルだいわ文庫)

 表紙のデザインがまず魅力的。先ずはこれが手に取るきっかけに。
 日本の伝統的な色、173色を、由来や歴史・文化とともに紹介。最後に色見本あり(CMYK数値付き)。ときどき挿しこまれる写真も美しいです。ビジュアルブックなのですぐに読み終わるかと思ったら、思いの外時間が掛かりました。手元に置いておく予定ですが、再読するというよりかは、事典的な使い方になりそうです。

 知っている色もいくらかあったとはいえ、やはり現代の日常からは失われつつある感性だと思いました。
 色にどのような名前があるか、私はそれをその文化の感性そのものだと思っています。無限といってもよい「色」をどう切り取るか、地理的要因や歴史や習慣を基に「人」が決めている。それで世界の捉え方が決まる。とても面白く、興味深いことです。虹の色数の話(日本語の「虹」は7色だが、英語の"rainbow"は6色)などは、聞いたことがある方も多いのではないかと思います。

 この感性は、現代では文学(文語的表現)か服飾関連くらいにしか残っていないのかもしれません。それも服飾は和装の場合のみ。むしろ洋服などだと、敢えてカタカナを使う傾向にあるように思います。最近見たのだとバーガンディーとか、昨年流行っていたものだとボルドーとか。色名に限らず、音しか表さないカタカナに置き換えすぎて、本質的な理解のできていない単語が氾濫(漢字だと感覚的に理解できることも多い)しているのは最近気になっているのですが、その話はまたいつか。
 自分が実際に口にする色の名前も、カタカナが多くなっているなあと感じます。そして、日本の色名でものを捉えるのも、おそらく和物を目にしているときだけ。このような本を読むと、日本人がここまで積み重ねてきた感性を忘れてしまうのはどうも哀しいことのような気がするのです。この色にはこんな名前があったんだなあと、新しい知識として得るのでむしろ新鮮でした。

 現代日本人の感性にも当てはまっているもの、反対に全くそんなイメージのなくなっているもの、それぞれあるのも面白かったです。「老人が日常的に着ていた色」とあれば、「ああ、納得。今でもこういうの着てる人多いよね」と思うものもあるし、「えー、お年寄りがこんな色着てたの?」というものもある。若者に人気のあったという色もそうだし、何かの演目で誰々が着ていたので流行ったとかいう色もそう。解るものもあれば、いまいちぴんと来ないものもある。
 そして、一般人は纏ってはいけない色というのも面白かった。高貴な人が身につける色だからというのが多いけれど、喪に服す人の色、罪人の衣の色なんていうのもある。禁色(例えば黄丹)といっても似て見える色もあり、カラーチャートで見ると似ているけれど、実際の染め方の違いで見分けることができるんだろうか、と染物の現物を見比べてみたい気持ちも。

 全く別の話になりますが、主にハイファンタジーの本を読んでいるとき、色の名前をどう表現しているかというのを興味深く見ています。東アジアモチーフと思われるファンタジー小説の感想を覗いたとき、「この世界観で色を『オレンジ』と表現するのはいただけない」というようなことを書いている人がいて、やっぱり自分と同じようなことを考えている人はいるんだなあと思いました。
 これも上に書いたことと同じで、その色名が存在するということは、その背景となっている国、植物、物質(鉱石、金属など)、動物、習慣などが存在するということなんだろうと、あまりにバックグラウンドに多くのものを孕む言葉であるので、書き手がどのように表現するのか非常に興味があるのです。

 日本の色の名前を知るということは、日本で積み重ねられてきた感性を以て世界を見るということにつながり、とても面白い経験になりました。今いる部屋のカーテンの色も、今までは何とも形容し難い色でしたが、今見ると白緑という色に似て見えます。人間はどうしても言語を以て世界を認識する生き物であるけれど、こういうちょっとしたことで世界が多様に見えるようになるのは楽しい。日本語は天候や自然現象を表す言葉も多いと聞くので、そのような本も読んでみたいなあと思っているところです。